アントレプレナーシップの体現者たち ジヤトコ フランス社
今年4月にジヤトコの企業理念の価値観に加わったアントレプレナーシップの考え方は、日本だけでなくグローバルに広がりを見せています。「アントレプレナーシップの体現者たち」第3弾はジヤトコ フランス社のGM、ギヨーム ルフッサンさんにお話を聞きました。
ギヨームさん
アントレプレナーシップが価値観に加わったことについて率直な思いを教えてください。
VUCA*¹や自動車業界100年に一度の変革期に突入し、私たちは今後も激しい変化に対応しなければなりません。アントレプレナーシップは今の私たちには必要な考え方ですし、とてもポジティブでした。アントレプレナーシップ検討メンバーとは事前に話していて、アイデアを色々共有しました。
個人的には「変化を楽しむ(Enjoy the change)」よりも、「変化を受け入れる(Embrace the change)」という考え方が良いと思います。変化は常に楽しいとは限らないので、「変化は普通に起きること」というスタンスでいれば、もっと良い考えが生まれて前向きになれます。
ジヤトコ フランス社でアントレプレナーシップを実践していることを教えてください。
『Antifragile: Things that Gain from Disorder(反脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方[著者] ナシーム・ニコラス・タレブ氏』という本には、強靭性(レジリエンス)を高めることなど、この時代を生き抜くためのいくつかのヒントが示されています。ジヤトコ フランス社は、市場のニーズに合った製品を提供するために何をすべきかを考え、アントレプレナーシップを持って長年様々な取り組みを行ってきました。どのような製品を開発するのか、なぜ開発するのかを徹底的に考え、型にはまらないアプローチを続けてきました。
フランスのメンバーと佐藤CEOの写真
具体的な取り組みについて教えてください。
ジヤトコフランスは19人(フランス13人、スペイン6人)の小さなグループですが、業務範囲が広いため、迅速な意思決定と柔軟かつ機敏な対応が求められます。
ここでは、3つの主な取り組みを紹介します。
まずは、インターンシップ生による様々なプロジェクトの開発です。例えば、フランスやスペインの大学の学生がジヤトコ フランス社に来て、約5〜6か月かけて製品とプログラムの開発の適応を行います。概念実証が得られれば、学生と一緒にプロジェクトを継続するか、専門家と一緒に進めるかを選択できます。最初は実験的に始めましたが、今では数多くのプログラムでうまく機能することが実証されています。このソリューションは、日本でも大きな付加価値になると思います。
2つ目は、バルセロナのJ-LABオフィスに自社で構築したNVH*²テストルームです。外注するとコストがかかるため、仕様設計から製造、組立まですべてを自社で構築することにしました。その結果は驚くべきものでした。
内製したNVHルーム室
最後は、自動車メーカー向けのエンジニアリングサービスの提案です。製品だけでなく、自動車メーカーでは提供が難しいサービスも補完しています。ジヤトコ フランス社のユニークなセールスポイントは、作業スピードです。例えば、自動車メーカーとアポイントを取り、わずか30分の会議で議論を尽くした後、契約締結まで達します。翌日には、実際にクルマに乗って取り組んでいます。非常に迅速で、成果物の品質も高いです。彼らは非常に満足しており、私たちは彼らから仕事をもらい続けています。
こうした活動の例はすべて、私たちにモチベーションを与えてくれます。
アントレプレナーシップを実践する上で重要なことは何でしょうか?
Deep Dive*³ には、潜在的なリスクとメリット (お金、リソース、時間、学習など) をリストアップして、リスクの抽出や、リスクを軽減する方法を検討する必要があります。 一歩ずつ、より小さなリスクから始めることで、失敗への恐怖を減らし、学習を開発の中心に据えることができます。 早く試し、早く学び、早く改善しましょう(Try fast, learn fast, improve fast)。 試さなければ学ぶことはできません。
果敢に挑戦することで、以下を学ぶことができました。
• 新規ビジネスの立ち上げ、価格設定、顧客との良好な関係の構築方法など。
• 車両の複雑な電子アーキテクチャ、バッテリー管理、電気自動車のシステム全体の熱管理
など、より深い新たな技術的知識など。
バルセロナのメンバーと
どうすればこのようなマインドを持てるのでしょうか?
特に新規ビジネスの場合、失敗を通じて学習を開発の中心に据える環境を作ることが不可欠です。リーダーの役割は、自らの人生の目的を語って道を示し、職場に心理的安全性をもたらし、「失敗しても大丈夫」と本気で伝え、メンバーに経験と反省の機会を提供することです。私は、すべてのグローバルリーダーに「自分自身が従うべきモデルであるか」を考え、どのような行動ができるかを検討してもらいたいと思います。
ジヤトコ フランス社では、経営陣が現地化されたこともあって、緊迫感が生まれ、率直で誠実な議論を通じてすべてのメンバーから素晴らしいアイデアが得られたことにより、これがより実現可能になったと感じました。
「私たちの強みは何で、どこにチャンスがあり、どこに向かっているのか」
戦略を立て、目標を明確にし、定期的に利用可能なオプションを再検討しながら、アジャイルな方法で目標に向かって進むことが重要です。
日本とフランスの考え方の違いを感じますか?
ジヤトコ フランス社の社員は、様々な国の自動車メーカーや大手パートナー出身で、多様性に富んでいます。日本とは特に組織体制が違います。私たちは19人で、自動車、バイク、自転車、プロジェクトの研究開発、技術研究、ベンチマーキング、アフターセールス、エンジニアリングサービス、パートナーの品質保証、販売促進など、幅広い分野を担当しています。そのおかげで、部門間の壁がなく、誰とでも議論することができ、広い視野を得ることができます。
日本は組織がサイロ化された企業が多いですよね。その場合、コアビジネスには役立ちますが、戦略ビジネスにおいては、意思決定が遅くなり、リソースが適切な場所と時間に配分するのを妨げているかもしれません。このことは、ダイバーシティの観点からも色々なバックグラウンドを持つ方々と議論したいですね。
*¹Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語
*²Noise(騒音)、Vibration(振動)、Harshness(ハーシュネス)の頭文字をとった略称
*³ビジネス用語で「深く掘り下げる」
2025年1月28日でジヤトコ55周年! おめでとう!