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自転車ビジネス最前線 -自転車構造とジヤトコのドライブユニット編- ジヤトコの強みを活かした“2in1”自転車用ドライブユニットの技術に迫る

変化を楽しみながら、新しい事業にも果敢にチャレンジしているジヤトコ。今号は9月2日に富士市で社会実験がスタートし、2024年度に量産化を目指す自転車ビジネスに挑むチームへのインタビュー。前編は技術のお話です。ジヤトコの自転車用ドライブユニットには、どのような技術が詰め込まれているのでしょうか?

メンバー紹介

Fig1. 左から新規事業推進部の岡本さん(プロジェクトリーダー)、稲岡さん(営業担当)、佐々木さん(営業/技術担当)、鈴木さん(アプリ開発担当)

自転車の種類

まずは自転車の種類を見てみましょう。

Fig2.自転車の種類と市場シェア
①シティサイクル:最も多くの人が乗っている自転車(市場占有率:約70%)
②マウンテンバイク:山道の走行などに適した自転車(6%)
③ロードバイク:競技などで使用されている自転車(5%)
④電動アシスト自転車:お子さまを乗せた走行や坂道走行に適した自転車(19%)

命題・差別化した電動アシスト自転車を開発せよ

岡本:今回私たちが開発したのは、人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA(以下、人テク展2023)でも展示した電動アシスト自転車用のドライブユニット(モーターアシストと変速機構、*Fig4参照)です。電動アシスト用自転車のビジネスは、パナソニック、ヤマハ発動機、ブリヂストンといった大手メーカー3社をはじめとして、イオンやカインズなどのホームセンター系、アサヒサイクルやサイクルメイトといった自転車販売専門の企業など、たくさんの企業が参入しています。そこにジヤトコがパーパスに掲げている「モビリティの可能性を拡げる」ひとつの手段として、ジヤトコの強みであるギアの技術を活かした自転車のドライブユニット開発に取り組みました。

Fig3.岡本さん

Fig4.人テク展2023で展示した自転車

稲岡:ジヤトコが開発している電動アシスト用自転車のドライブユニットは、自転車メーカーと一緒に企画・開発を進めています。アシストモーターや変速機は、すでに大手部品メーカーの独壇場となっており、自転車メーカーはすでに存在している商品の中から選択して自転車の企画・開発を行っていることが多いです。後発のジヤトコが自転車ビジネスで勝つためには、お客さまの要望を取り込み、他社とどう差別化するかが重要だと考えました。

佐々木:まずは、ドライブユニットの搭載位置に着目します。ドライブユニットの基本搭載位置は、フロント/センター/リアの3つのタイプ(Fig5)が存在します。
現在、開発しているドライブユニットはリアタイプになり、重心が安定し安全性が高いこと、フレームの変更規模が小さく抑えられることで、お客さまにとってはフレームの開発工数を抑えるメリットがあります。しかし、ただリアに搭載するのみでは差別化はできません。

Fig5.ドライブユニット搭載位置(各部の名称*自転車の予備知識)

次に変速機構の構造に注目します。変速機構は外装変速と内装変速(Fig6)が存在します。
外装変速と内装変速についてはそれぞれメリットデメリットがありますが、内装変速は技術難易度の課題が大きいのが特徴です。ギアを変えるのに必要な機構を“リアハブ”と呼ばれる部品の中に収める必要があり、高度なギア技術とレイアウト技術が必要になるため、業界全体でみると、内装変速を採用している自転車が少ないということが分かりました。

岡本:ギアとレイアウトの技術は、ジヤトコの強みそのものだなと。ジヤトコの強みがあれば、技術難易度が高いとされる内装変速で、ジヤトコが今までに関わりのない新たな業界で、価値ある製品が生み出せるかもしれないと考えました。

Fig6. 左:外装変速、右:内装変速

外装変速

スポーツ自転車などで利用されているもっとも一般的な変速装置の種類です。
変速装置が外部に露出しているので「外装」と呼ばれます。

  • 強み:多段化しやすい、軽量でシンプルな構造、メンテナンスしやすい
  • 弱み:音がうるさい、チェーンが外れやすい、停止中に変速できない、チェーン駆動方式しか選択できない、露出しているため錆びやすい

内装変速

シティサイクルや、街乗り主体のスポーツ自転車で使用される変速装置です。
ギアを変えるのに必要な機構が、リアハブと呼ばれる箱の中に収まっているので「内装」と呼ばれます。

  • 強み:音が静か、停止中に変速できる、チェーン駆動方式、ベルト駆動方式、双方の選択が可能
  • 弱み:外装に比較して重い、車輪の脱着が面倒、変速段数が多いものは高価、外装変速に比べ、技術難易度が高い

誕生・世界初2in1電動アシスト自転車用ドライブユニット

佐々木:最終的に私たちが考えた製品は、出力250Wのアシスト用モーターと2組の遊星歯車機構、クラッチで構成した2in1自転車用ドライブユニットです(Fig8)。遊星歯車機構のひとつはモーターと組み合わせて減速機の機能をもち、もうひとつが変速機で、クラッチ締結状態によって3段変速できる機能を有しています。
この極小スペースにアシスト用モーターとギア(変速機)を収めることは並大抵の技術力ではできません。ジヤトコには長い間CVT/ATで培ってきたギアの技術と、多くの自動車メーカーのエンジンルームに併せてユニットの形状を適合してきたパッケージングの技術があって初めて実現できる製品で、だからこそ、世界初のドライブユニットを生み出すことができました!

Fig7.佐々木さん

Fig8. 2in1ドライブユニット。銀色の球体(リアハ ブ)の中に、モーターと変速機が収納されています

制御アプリも独自開発

岡本:私たちが検討しているのはドライブユニットのハード部分だけではありません。アシスト制御を行うスマートフォンアプリとセットで商品を提供することで、付加価値が高くお客さまに喜んでいただける製品になると考えました。ちょうど、プログラミングに精通した鈴木さんがいたのでチームに加わってもらい、独自アプリ開発がスタートしました。

鈴木:前職でスーパーコンピューター向けの言語開発をしてきた経験を活かし、現在は自転車の制御アプリ開発にチャレンジしています。アプリ開発のコンセプトは、徹底的なお客さま思考です。快適に感じるスピードや、自転車を漕ぐ力も違いますので、モーターのアシスト力立ち上げ時間やアシストの継続時間など、スマートフォンアプリからエンドユーザーの好みの乗り心地を提供できるようにすることを目指しています。
また最近は、健康を意識している方も多いので、自転車を漕ぐ力を有酸素運動になるように自動的にアシスト量をコントロールすることで、普段は運動のための時間がとれない方でも気軽に通勤通学の時間で健康づくりができる「脂肪燃焼モード」も試作中です。
プログラミングやクラウドなどの新しい技術獲得にチャレンジしてみたい方がいらっしゃいましたら、ぜひ当チームにご参加ください。

稲岡:スマートフォンアプリは見た目と操作性にも力を入れていますよね?

鈴木:その通りで、スマートフォンアプリのUIは視認性よく、直観的に扱えるかなど、デザイン力がキーポイントになります。美術大学出身の私としてもデザインにはこだわりたい(Fig9)。まだアプリは完成していませんが、最後まであきらめずにエンドユーザーに喜んでいただけるアプリに仕上げたいと思います。

Fig9.スマートフォンで簡単操作が可能な制御アプリケーションを開発中

Fig10.鈴木さん

次に目指すは第二世代

岡本:より多くの自転車に適用できるように、小型・軽量化を狙った第二世代の開発も進めています。

佐々木:まずドライブユニットのサイズですが、現行が幅140mmなのに対し、第二世代は幅75mmと約50%のサイズダウンを目指します。重量も現行の3kg超から2kg台前半への約30%の軽量化にチャレンジしています。

稲岡:この第二世代が完成すれば、お客さまの範囲も大きく拡がります。現行開発品ではサイズの課題から、搭載できる車種は外装変速を採用しているリアフレーム幅の広いタイプに限られてしまいますが、第二世代になると、シティサイクルへの搭載も可能になります(Fig2)。これにより、潜在的なユーザーは数倍にもなるため、より多くのお客さまにジヤトコのユニットを選んでいただけるかもしれません!

Fig11.稲岡さん

Fig12.第二世代ドライブユニット(開発中)

9/2 富士市コラボの社会実験がスタート!

今月初旬の9月2日に、富士市社会実験スタートセレモニーが東名高速道路の富士川楽座サービスエリアで開催されました。佐藤CEOのほか、自転車ビジネスに携わる社員もセレモニーに参加しました。
今後も社会実験の模様をレポートしていきますので、ご期待ください♪

Fig13.テープカット

Fig14.富士市のレンタサイクルがスタート

来月号では、自転車ビジネス スタートアップ編をお届けします。お楽しみに!

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