(日本語) アントレプレナーシップの体現者たち 新規事業推進部
2024年度から企業理念の価値観(T-E-A-M)に、起業家精神の意味を持つアントレプレナーシップ(Entrepreneurship)が追加され、T-E⁺-A-Mとなりました。
特集「アントレプレナーシップの体現者たち」第4弾は、アプリ開発事業や大手企業とスタートアップをつなぐプラットフォームであるPlug and Play*¹との窓口を務める新規事業推進部の杉山さんにお話を聞きました。イノベーションの聖地であるシリコンバレーで見たものとは――。
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(日本語) 新規事業推進部の杉山さん
(日本語) 杉山さんの業務内容を教えてください。
杉山:新規事業におけるアプリ開発の推進で、例えば電動アシスト付き自転車のアプリなどを事業に乗せることがメインの業務です。
その他、昨年6月にパートナー契約したPlug and Playにおけるジヤトコの窓口も経営企画部の平井さんと一緒に担っています。
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(日本語) Plug and Playの主催イベント
(日本語) これまでを振り返って、「アントレプレナーシップを発揮したな」と感じた事例はありますか?
ジヤトコで初のQC検定1級を取りましたが、自発的に出来たと言えるものはまだないです。強いて言えば、入社したての頃に富士宮工場の紹介ビデオを作りました。製作から8年が経ちましたが、今年も使っていただいたようです。
インフィニティ活動の推進に向けたPR活動も、全員で目標に向けて突っ走りました。
現在はQCアプリを事業化するために、アプリ開発の本場であるアメリカのシリコンバレーに行かせてほしいと自ら訴えました。
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(日本語) 富士宮でのインフィニティ活動の推進
(日本語) 新規事業開発におけるモチベーションを教えてください。
私は元々好奇心が強い方でした。小学校の時からWEBページを作って動画を投稿(今でいうYouTubeのように)していました。
大学時代は赤ペン先生のクラウド版サービスをPoC(Proof of Concept:概念実証)まで進めましたが、当時はガラケーだったので叶いませんでした(笑)。
入社後、富士宮工場での品質保証から始まり、3年半メキシコにも赴任しました。工場に育てられたので、そこでお世話になった方々に恩返しの仕事がしたい。それがモチベーションの源になっています。今でも「頑張れよ」と言ってくれますし、メキシコの方々も、私が出張しているのをSNSなどで見ると、連絡してきて色々聞いてくれます。
(日本語) ジヤトコのアントレプレナーシップに対する姿勢は変わってきたと感じますか?
前向きになってきたと思いますが、あまり難しく考えすぎなくても良いのではないでしょうか。アントレプレナーシップは「好奇心」とも言われますが、イノベーションの聖地と呼ばれるシリコンバレーでは、その素質を話すときにpatient(我慢強く、粘り強く)という発言をよく聞きました。何か新しいことを起こそうと難しく考えるのではなく、例えば生産では、JEPS活動そのものが、ビジョンを描き、何としてもそこへ達成するアントレプレナーシップの姿があります。品質不具合のような非常時も、お客さまに迷惑をかけないよう、スピーディーに解決する。それがまさにアントレプレナーシップだと思います。
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(日本語) シリコンバレーでの経験を語る杉山さん
(日本語) シリコンバレーで学んだことを教えてください。
シリコンバレーの特徴的な点は、失敗を次の成功のための重要な学びとして捉える文化が根付いていることです。ただし、「失敗を受け入れる」というよりも、「失敗から得られる教訓を最大化し、次のビジネスに活かす」という視点が強いと感じます。 この土台ができています。
また、アントレプレナーシップは起業家精神やイノベーションなどがイメージされやすいですが、事業を作ることを意識しないといけません。アントレプレナーシップの基礎は「ファイナンス、・リスクマネジメント、・チームビルディング」の3つが重要だと言われました。その意味では、ジヤトコのアントレプレナーシップは少しイノベーションを意識しすぎているかもしれません。イノベーションはもちろん重要ですが、この3つの基礎があってこそ、革新的なアイデアを持続可能なビジネスに発展させることができます。そこはシリコンバレーに住むアントレプレナー達と直接会話する中で感じたことです。本当そこが違うと。仕組みもそうですが、シリコンバレーでは当たり前に3つの基礎の教育があります。基礎教育が充実しており、起業を志す学生の多くは、正規のカリキュラムや課外活動を通じてこれらの知識を積極的に習得しています。
その他には、(2014年に設定した)T-E-A-Mすべてをアップデートする必要があると思います。その実現のためには、これまで以上に「外を見ること(External Mindset)」が重要だと改めて感じました。
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(日本語) アップル共同創業者の一人、スティーブ・ジョブズ氏の自宅ガレージ
(日本語) 印象に残った言葉や会社はありましたか?
シリコンバレーのイノベーションセンターで、グーグルを退職した方と1日中話しました。
アップル共同創業者の一人、スティーブ・ジョブズ氏は、日本では「発明家」「デザイナー」「技術者」といったイメージでよく語られています。一方、シリコンバレーでは、彼を単なるイノベーターとしてではなく、「ファウンダー(創設者)」かつ「ビジョナリー(先見の明がある人)」として、一貫して評価しているのが印象的でした。繰り返しになりますが、アントレプレナーシップは「ファイナンス、チームビルディング、リスクマネジメント」が重要だからです。新規事業推進部としては、技術開発者ではなく、起業家にならないといけないのに、そのマインドが欠けていたと気づかされました。「自分はこれまで何をやっていたんだ」と思い、視点が変わりました。
印象的な会社で言うと、ありきたりですが、グーグルの20%ルール*²です。勤務時間の20%を自分の担当業務以外の取り組みに充てて良いとする制度ですが、アントレプレナーシップ醸成につながると思います。20%ルール、パーパス、ビジョンがセットなのですごく生きてくると思います。そのような風土をジヤトコでも実現出来たら良いと思います。
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(日本語) グーグル本社の中庭
(日本語) 改めてアントレプレナーシップ醸成のために必要なものは何でしょう?
失敗を恐れず、どんどん外に出ることだと思います。外の意見を浴びるような機会を増やすことで、色々気づくことがあります。
例えば、ある企業の新規事業プログラムでは、ビジネスコンテストの審査員にシリコンバレーの投資家を入れています。もちろん厳しいことを言われるのですが、通ればすぐにお金がもらえます。外の意見は非常に重要だと思います。
私は社内で数多くのアントレプレナーシップを見てきました。それにプラスして、「外に出る」ことと、事業視点での3つの基礎を学び続けます。分からないことは素直に受け止めて学ぶ。まずは自分が変わって、組織全体の変革につなげていきたいです。
*¹ 2006年に米国・シリコンバレーで創業。スタートアップ、大手企業、投資家をつなぎ、世界中のイノベーションを加速させることをミッションとして掲げ、世界18カ国30拠点以上に展開。これまで500社を超えるパートナー企業が参画し、1,000以上のプログラムやイベントを実施しながら2,000社以上のスタートアップの事業化・事業成長を支援している。
*² 業務時間の内の20%を「普段の業務とは異なる」業務にあてて良いという制度。この制度により、Gmail、Google マップ、Google ニュースなどといったサービスが生まれたとされている。