エキスパートリーダーに聞く! ジヤトコ電動化推進に必要なモノ
電動化ユニットシステムの第一人者、開発部門 小野山ELインタビュー
急激な速度で電動化へシフトしている自動車業界。ジヤトコもCEOポリシー3本柱のひとつに電動化推進をかかげ着実に歩みを進めていますが、今後さらなる加速が求められています。 今号は開発部門、電動ユニットシステム分野の第一人者“小野山”エキスパートリーダー(以降、EL)へのインタビュー。小野山ELが考えるジヤトコの電動化を加速するために必要なモノ、日常業務での取り組み方などについてお話をうかがいました。
小野山さんご経歴
小野山EL
■所属:開発部門 レビュアー
■役職:電動ユニットシステム、エキスパートリーダー
■経歴:
●1990:日産自動車入社、エンジン主運動部品設計
●1997:電動パワートレインシステム先行開発、HEVプロジェクト開発を歴任
●2015:電動パワートレインシステム、エキスパートリーダー
●2021:ジヤトコ入社 現職
日産時代、ジヤトコとの思い出
33年前、日産自動車に入社した当初、工場実習で現在の富士2地区の熱処理に配属されました。赴任初日に富士山がきれいだったのを今でもよく覚えています(笑)
小野山ELに聞く!
小野山ELにジヤトコの電動化についてお話をうかがいます。ジヤトコは日産自動車へ多くの技術者が出向するなど、電動化への歩みを進めています。
Q:ジヤトコが目指す電動化シフト後のありたい姿とは、どのような状態でしょうか?
まずはモータ・インバータ・ギアボックス(減速機)を統合したe-AxleというユニットをTier1サプライヤとして市場に投入し、実績を残すことです。そして車両メーカ、電動車を運転するお客さまにジヤトコならではの価値を提供し拡販することです。
EV用電動化ユニット(3in1)
e-POWER用電動化ユニット(5in1)
Q:今のジヤトコの電動化のレベルは?
市場に実績を残すのは少し先になりますが、開発中のユニットを市場投入する前の段階を三段跳び「ホップ・ステップ・ジャンプ」で例えると、今は最初の1回目の「ホップ」の踏み切りに向けて、徐々に加速しているような状況だと思います。
Q:電動化シフトへのキーポイントは何でしょうか?
まず「ホップ」に向けて、すでに製品を納めているギアボックス、そしてモータ・インバータも含めた一体ユニットを、これまでのジヤトコの強みを生かしてしっかり製品に反映させることが求められます。強みというのは、ギア技術であり、パッケージングの技術です。ギアはもちろん、いろいろな部品をうまくまとめてパッケージングするのもジヤトコの強みだと思っています。 次に「ステップ」に向けて、ユニットを構成するモータ・インバータの競争力をサプライヤと最大化する。 最後にきれいな「ジャンプ」を決めたいわけですが、助走中の今は達成したいことのイメージを高め、同時に競争相手を見極めることが重要だと思います。
インタビューの様子
Q:今後、そのキーポイントの技術を磨いていくために何が必要でしょうか? 日常業務で社員の皆さんが意識すべきポイントは?
今の強みを生かすためには、達成しなくてはいけないこと(上位階層の要求)をきちんと理解することが必須です。決して受け身ではなく、責任をもって納得し合意することが求められます。そして競合他社よりもきれいな「ジャンプ」を決めるためには、とにかくあらゆる情報を集めないと勝てません。陸上競技でも、シューズやウエアの技術革新に無頓着で勝てる時代ではないですよね。「競合他社の自分と同じ立場のエンジニアは、今どうしているか?」を規範モデルとして推定し、「Python*を使っている」「ベンチマークを完了した」「新工法を採用している」など、今不足していることを常にチェックすることから始めましょう。そして競合の動向情報を手に入れたら、必ず「なぜ競合はそうするのか?」を自分なりに仮説を立てて検証してください。とはいえ、ひとりだと情報に埋もれがちなので、ZASSOによるオープンな論議を一緒に進めていきたいと思います。 * Python:プログラミング言語の一種。業務改善ツールとして活用されています。
Q:社員の皆さんへ、力強いひと言をお願いします!
実は陸上競技の経験がない私ですが(笑)、イメージは伝わったかと思います。競合他社のe-Axleが昨今続々と市場投入されていますが、最初の試技を飛び終わった状態の競合他社も多い。ジヤトコのe-Axleは日産のEVの経験にジヤトコの強みを加えた、2回目の試技のようなものです。ジャンプを決めて見せつけてやりましょう! そして次、その次に向けてしっかりと情報を集め、戦略を立てましょう。 ゲームと同じように、漫然と与えられた目標を達成するより、自ら作戦を立て、攻略してクリアすることはとても面白いものです。電動化をリードする製品を、力を合わせて世の中にリリースしていきましょう!
ジャンプを決めて、ジヤトコの力を見せつけてやりましょう!
最後に、ジヤトコの電動化の現状おさらい
小野山ELインタビューをより深く理解するため、ジヤトコ電動化への歩みについて現状をおさらいしましょう。「人とくるまのテクノロジー展2022」で佐藤CEOは、2030年までに、ジヤトコならではの技術が詰まった電動化ユニットで年間500万台生産を目指すと宣言しました。 また、日産自動車は長期ビジョンNissan Ambition2030(2021年11月29日ニュースリリース)で、「e-パワートレインの進化に関し、パートナーであるジヤトコとともに、軽量化と効率向上を実現する技術開発に取り組んでいきます」と言及しています。
人テク展ブリーフィング資料@出展 人テク展2022より
https://www.nissan-global.com/JP/COMPANY/PLAN/AMBITION2030/ Nissan Ambition 2030 ホームページ ※リンクから動画をご覧いただけます(28分20秒をご覧ください。)