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External mindsetのススメ 杉田さん、馬場さん:モータースポーツ最前線へ

(この記事は、社内の「External mindsetサマーキャンペーン」のコンテンツ記事から一部編集の上、掲載しています) External mindsetをもって仕事にあたっている役員、社員の方から、その心構えやマインドセット継続のための仕組みなど、私たちが使えるヒントを聞かせていただくこの連載、今回はニスモ(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社)に出向中の部品システム開発部の杉田さんと制御システム開発部の馬場さんです。

2019年4月、ジヤトコからニスモへの初めての出向者となった杉田さんと馬場さん。同じ自動車関連会社ですが、ジヤトコでの市販車用トランスミッションの開発から、ニスモでは主にレーシングカーのエンジンの開発へと、まったく違う世界に飛び込むことになりました。一からのスタートに悪戦苦闘の日々を振り返りつつ、そこから得た多くの学びを語っていただきました。

2019仕様のSUPER GT GT500クラス 23号車の前で(左:杉田さん、右:馬場さん)

始まりは“高橋さんと語る会”

――ジヤトコからニスモに出向することになったきっかけを教えてください。

杉田さん:2018年に、高橋EVPが日産でレースカーの開発をされていた時のお話を、若手の有志メンバーで聞く機会がありました。その時に高橋さんから「現役のニスモの方のお話も聞いてみては?」との提案を頂き、ニスモの役員の方をご紹介いただきました。その役員の方から「ニスモは若手が少ない。こういう機会をきっかけに、ジヤトコと交流したいですね」という話が出て、翌年度には出向ということになりました。私は、もともとモータースポーツが好きでしたので、このような機会に恵まれてうれしかったです。

馬場さん:この時に「制御系の人財も1名欲しい」ということで、私が上司から打診を受けました。私もモータースポーツに興味があったので、こんな機会はないと思って志願しました。ジヤトコでの業務経験はわずか1年ということもあり、「一人前に仕事ができるか」という不安はありましたが、「やってみたい」という自分の気持ちに従いました。

開発スピードのギャップ

――ジヤトコとニスモの違いを感じる時はありましたか?

杉田さん:私はJatco CVT-Sを、初期から量産開始まで見届けてから出向しましたが、それと比べてニスモは開発のスピードが全然違います。ジヤトコの場合は、3年~5年、そういうスパンで開発しますが、NISMOチームは毎年新しいエンジンを投入してレースに挑んでいます。また、開発人数も少ないので、個人の判断から最終決定までがとても早い。そのため、個人の判断が重要になり、責任も非常に強く感じます。

馬場さん:私はSUPER GT GT 500クラスのプロジェクトに携わっていますが、ジヤトコでは承認プロセスを一から積み上げていくのに対して、NISMOチームでは投入判断を早々に迫られます。最初はこの開発サイクルのスピードにどう立ち回れば良いか悩みました。また、市販車は実験グループからフィードバックをもらいますが、NISMOチームでは最初からチームメンバー、ドライバーにフィードバックをもらって、トライ&エラーを繰り返していくので、いきなりお客さまに商品を届けるイメージです。

杉田さん:一方、モノづくりの基本プロセスは同じなので、ジヤトコの経験が活きています。スパンは違えど、やることは同じ。私は元々開発にいたので、開発での不具合や課題に直面した時に、サプライヤーなど関係者を交えて解決して行く、必要に応じて、参考文献とかネットとかを使って調べて解決する、というところは同じですね。

トランスミッションとエンジン

――ニスモで苦労したことは?

杉田さん:私も馬場さんもエンジン開発担当ですが、エンジンとトランスミッションは全然違います。私は大学時代に学生フォーミュラに出場していたり、大学で内燃機関の勉強をしたりしていましたが、その知識止まりです。そこからいきなり最先端のエンジンを開発する会社に来たわけです。入社直後の2か月の研修で実際にエンジンの分解・組み立てをしたり、マニュアルや参考書を見たりしながら、部品の機能を覚えてようやくスタートラインに立ちました。

馬場さん:私もニスモの上司から参考書をもらい、それを片手に日々勉強する毎日でした。また。杉田さんと同じくエンジン整備のグループ研修に参加し、部品を手で触り組み立てていく中で、何とか覚えていきました。今まで何も知らなかったエンジンに対し、レースで戦えるレベルまで理解を深めていくのはとても苦労しましたね。

ダイレクトに感じるやりがい

――ニスモに出向して良かったことは?

馬場さん:去年のSUPER GT GT 500クラスのラウンド3とラウンド6(いずれも鈴鹿)で優勝して、グリッドでお祝いしました。ファンの皆さま=お客さまと直に喜びを分かち合えたんです。私がニスモで担っている仕事は、「お客さまに、日産が強いところをお見せして喜んでもらうことに尽きる」と思っています。ニスモに出向しなければ、「お客さまの存在」をこれほど感じられませんでした。私の仕事が、レースの結果にダイレクトに反映され、お客さまの喜びにつながることをひしひしと感じています。

SUPER GT GT500クラスに毎戦同行

ロニー・クインタレッリ選手、松田次生選手と密に連携

杉田さん:次期型のクルマを知っていることですかね。モータースポーツ好きな人はとても知りたいと思います。また、今は、自分が設計した多くの部品が実際にクルマに搭載され、それを目の前で見ることができるので、感動とともに当事者意識を強く感じることができます。最初に自分の担当する部品が2020年シーズンの車両に乗ると決まったとき、その開発でものすごく苦労しました。最終的には2回優勝という結果につながってうれしかったです。

勝つか、負けるか

――External mindsetの意識は?

杉田さん:「競合を知る」ことは、NISMOチームの業務の一つです。SUPER GT GT500クラスだと3メーカー(日産、ホンダ、トヨタ)しか参戦していないので、競合相手は明確です。レースでは、結果もタイムも分かるので、External mindsetを意識するというより、競合を知るのは当然の事になります。市販車だと、デザインや走りの良さなど、数字として表れないことも多いのですが、レースの場合は他社より何秒速いか遅いか、勝つか負けるかが全てなので、そこはシンプルで分かりやすい。みんな、現状で満足することはなく、どんどん改良していこうというマインドがある。NISMOチームの業務で面白いところです。

エンジン部品設計を担当(秘匿の関係上、職場はお見せできません)

ジヤトコではNISMO FESTIVALのコアメンバー

馬場さん:エンジンについて素人の状態でニスモに出向してきましたが、社員の皆さんは温かく受け入れてくれました。最初の頃に比べ、今は信頼してもらえていると感じています。信頼を獲得できたというのは、やっぱりExternal mindsetを持って過ごしていたからだと思います。実際に外に出て、新しいことにチャレンジしてきた、その結果だと思います。

当事者意識と責任感

――ジヤトコに持ち帰りたいものはありますか?

馬場さん:当事者意識と責任感が身についてきたと自負しています。サーキットに行くと、特に当事者意識を強く感じます。NISMOチームでは、T-E-A-MのExternal mindsetだけでなく、Aspiration to win:勝利へのこだわりも日々学んでいます。このマインドをずっと持ち続けたいです。

杉田さん:モノづくりのマインドですね。ジヤトコもニスモも同じだとは思いますが、モノづくりの想いや考え方、取り組み姿勢は、この出向でかなり強化されました。また、グローバルに各国の状況を考えるようになりました。モータースポーツの本場である欧州サプライヤーとやり取りすることが多いのですが、例えばコロナや経済情勢により、その国のサプライヤーはどういう状況なのかを予測しておかなければ、後手に回り、必要なものが入手できない可能性がある。今は、コロナの状況とか、ロックダウンの情報などを注視しています。

杉田さん



2015年入社。ジヤトコではCVT-Sなどのプロジェクトに関わる。現在はニスモのパワートレイン開発部/パワートレイン設計Grでエンジンの部品設計やドライブトレインの設計などを担当。

馬場さん



2017年入社。ジヤトコでは制御システム開発部でMBSE(Model Based Systems Engineering)開発推進業務に関わる。現在はニスモのパワートレイン開発部/制御・電装Grでエンジン制御を担当。

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