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External mindsetのススメ シーズン2
「つなぐ、つながる」ために 古川SVP

External mindsetをもって仕事にあたっている社員や役員の方々から、その⼼構えやマインドセットを聞かせていただく「External mindsetのススメ」シーズン2。 今回は、調達部門の部門長、SVPの古川さんにお話をうかがいました。かなり堅い話になるのかと思いきや、いきなり「時差がない話」から始まり、「鉄板ネタ」や「パーパス」、「調達部門の矜持」まで自由に楽しくお話しいただきました。

古川さん

メキシコには時差がなかった

先日、ジヤトコ メキシコを訪問してきました。まずは「メキシコには時差がなかった」という話をしましょうか。歳をとって時差を感じなくなってきた、、という話ではありません。 ジヤトコメキシコの社員の皆さんとのタウンホールミーティングで「あなたはなぜ、今の仕事をしているのですか?」と問いかけたところ、「お金を稼ぐため」「自分自身を高めたい」「家族のため」「新たな人との出会いのため」など、次々に意見が出てきました。ここで、私は飛行機の中で読んだ本「ハート・オブ・ビジネス」の話をしました。「その仕事に情熱を持って取り組むことができる/その仕事をやることを周りから求められている/その仕事が得意である/その仕事でお金を稼ぐことができる これらの4つのファクターが交じり合ったときにもっともその人に適した仕事になる、それが仕事のパーパスになる」と。この本は世界最大の家電量販店ベスト・バイの元CEO、ユベール・ジョリーが執筆し、初めて経営者がパーパス経営を語った本だと言われています。

一瞬みんながシーンと静まりましたが、私が再び「自分は何のために仕事をするのかをみんなの前で話したい人は?」と聞くと、多くの方が口々に自分の意見を述べてくれました。さらに「1つの質の高いコメントよりも、10のさまざまな意見が出たほうが他の人をインスパイアして議論がよい流れになるから」とアドバイスしたらもっと活発に意見をだしてくれて。ジヤトコメキシコの皆さんのエネルギーを感じつつ、とても楽しい時間を過ごさせてもらいました。ミーティングの前には時差ボケで少し眠かったのですが、このときはまったく眠気や疲れを感じない。

そのとき、私は気がついたのです。今、自分は情熱を持って、情熱を感じて仕事ができているんだと。とってもいい経験をさせてもらっているんだな、ってね。 メキシコには時差はありませんでした。

長崎の出島で生まれました

私は長崎の出島で生まれました。こう言うと皆、びっくりしますが、実は母が私を出産したのが出島町25番にある出島病院なんです。自分の家は長崎市の西の端でした。その町は鉄道はもとよりバスもなく、長崎市街へは船を使う必要がありました。船と言えば、小学校5年生の2学期に担任の先生が産休になり、代用教員でやってきた大学を出たばかりの若いチャーミングな先生を思い出します。子どもたちはみんな先生が大好きで、先生も一人ひとりに向き合ってくれました。その先生が任期を終えて船で帰っていくとき、先生も生徒も泣きました。汽笛とともに船は遠くへ消えてゆく。。 とても美しい思い出です。

高校時代はラグビーに打ち込みました。進学高でしたが、県で一番強く、チームメイトには卒業後に同志社大学に進みレギュラーで3連覇を成し遂げることになるフォワードが2人いました。私はキャプテンを務め、花園を目指していましたが、県大会の決勝で負けてしまったのです。とにかくショックで。成人してから冷静に考えると「井の中の蛙」だったのでしょうね。長崎で一番強いことにかまけて、対外試合をあまりしておらず、外の世界を知らなかった。また、チーム内でケンカも絶えませんでした。「俺のほうが上手いのになんであいつがキャプテンなんだ?」と言われたこともあります。ひとつの目標に向かうOne Teamにはなれていなかった。今でも夢に見ます。体は大人なのに、私はその試合に出るためにスパイクを履こうとしているのです。あれっ、あれって。 とても悔しい思い出です。

小学生の頃と高校のラグビー部(中央下段でボールを前にしているのが古川さん)

海外で仕事をしてみたい

私は1984年に日産に入りました。当時、日産は「グローバル10」といって世界のシェア10%獲得を目指すと公言していました。私も日産で世界に出て仕事をしてみたいと思ったのです。入社後、ようやくその願いが叶うのが1996年です。イギリスに赴任するチャンスをもらいました。でもそのときのTOEICの点数は350点。よく行かせてくれたと思います。

イギリスで彼らと自分の差を一番感じたのはプレゼンテーションです。いつも堂々と話します。骨格や声の出し方が違うのではないかと思ったりもしましたが、直接「なぜそんなに素晴らしいプレゼンができるのか?」と聞いてみたら「それはこの日のために準備をしているからだ」と言われました。人にアピールするプレゼンテーションについて勉強をした上で、十分な準備と練習をしてその場に立っているのです。イギリスやフランスの政治家やビジネスマンが、戦略的で頭がよく堂々と見える裏側にはしっかりとした準備がある。それ以降、私は準備を怠りません。

中国にも赴任しました。2003年の東風日産の初代の駐在員として購買部門の責任者となったのです。今でも覚えていることがあります。購買部門は当然コストダウンに取り組んでいくのですが、年末になって目標まであともう少し足りない。皆で目標を達成するためのアイディアを出し合ったのですが、中国人の女性のマネージャーが最後の手段として提案してきました。「古川さん、財務本部長の高さんに夕食をごちそうしてあげてください。いい気分になってもらって目標達成にしてもらいましょう」って。半分冗談でしたしそんなことはできませんが、国によってさまざまな考え方があるものです。実に面白い。 高さんは現在、東風日産の副総経理で、私とは今でも朋友(ポンヨウ)です。

External mindsetは人とつながり、人を知ること

イギリスでも中国でも、本当にその国、その企業と仕事をしたければ、まずは人を知ることが大切です。人を通してその国や企業を理解する。その人たちは何を大切にしているのか、どのような考え方をするのかを知った上でビジネスをしないとなかなかうまくいきません。External mindsetで人とつながり、その人、その企業、その国を知り、自分のこととして吸収することで相手との交流が深まっていきます。すべては人に帰結する。そう思うのです。

先日、ドイツを訪問し、ボッシュのATCU事業部のトップ、ライン・ウェバーさんと3年ぶりに直接会ってきました。この方とは半導体不足により、ある期間、ほぼ毎週末に状況についてオンラインで打合せをしてきたのですが、次第に画面上の彼の顔を見ているだけで、「ああ、今は厳しそうだな」とか、「言わないけど、順調に進んでいるんだな」ということが分かるようになってきたのです。今回の訪問で私が彼の周りの人に「彼の顔を見れば、私は彼が次にどんな話をするのか分かるんだよ」って言ったらみんなは「そんなことはないだろう」って顔をするんですよ。でも分かるんだなぁ。

人と人とのつながりに国による違いはあまりないようです。本当に深くつながれば、相手が次に何を言うかが分かるようになるのです。そのためにはまずは仕事で深く向き合うこと。次に、食事などをともにして、お互いの国の生活のことや出来事について話をする、さらにプライベートな話に発展する。そのようにして相手の考えを知ることでさらに深くつながることができる。そう思います。 「人とつながり、人を知る」これが私のExternal mindsetです。

ジヤトコメキシコメンバーと古川さん「人とつながり、人を知る」

部門のパーパス

今、調達部門では「部門のパーパス」を論議しています。若い人たちに「部門パーパス」が必要か否かというところから議論をしてもらっていますが、彼らは「部門のパーパス」は必要だと言うのです。 私は当初、会社のパーパスがあり、会社のミッションがあり、部門のミッションがあるのは自然な流れだけれど、ここに部門のパーパスができてしまうと皆、混乱するのでは? と思っていました。でも、ここまで議論を聞いたり、自分でもあれこれ考える中で「個人のパーパスがあるように、部門のパーパスがあってもいいんだよな」って思い始めました。 「私たちは、つなぐ、動かすを実践し、ジヤトコの挑戦をリードします」 今は(11月初め)仮の状態ですが、これが若い人たちが考えてくれている調達部門のパーパス案です。さきほど、私は人と「つながる」ことが大事と言いました。前述の「ハート・オブ・ビジネス」にも「パーパスと人が深くつながることはビジネスの核心である」という言葉があります。「つなぐ、つながる」という言葉を若い人たちも大事だと思ってくれている。よい部門パーパスができそうです。

調達部門の矜持

私は「調達部門が目立つのはろくな会社じゃない」ってよく言っています。会社は商品であったり、技術や生産システムで売っていくべきであって、私たち調達部門はあくまでも裏方であり、縁の下の力持ちだと思うのです。でも、果たすべき役割は重要です。

一般的には調達部門の役割は「購買活動により製品競争力を向上させ、お客さまに満足していただく」ことなのですが、ジヤトコの調達にはもうひとつ重要な役割があると考えています。それは「日産グループの中で収益の観点からもジヤトコのプレゼンスを上げていく」ことです。材料費高騰やインフレ、エネルギーコスト、品質問題、台数減など逆風の中で、ジヤトコが収益目標を達成できない言い訳はいくらでもあります。でも、私たち調達部門が踏ん張って、逆風の中でも収益目標を達成することで「ジヤトコはCVTや電動パワートレインを作るだけでなく、日産グループの収益にもしっかり貢献してくれている会社だ」「やはりジヤトコは重要なパートナーだ」と言われるようになり、開発力や生産技術、品質の面だけでなく、グループ経営の観点でも信頼を勝ち取り、欠かせない存在になっていくのです。 だから、私は部門の皆さんにこう話しています。「ここが正念場で、信頼してもらえるかどうかの瀬戸際だよ。だからがんばってやり遂げようよ」と。 今こそ私たち調達部門の腕の見せ所です。

おまけ

イギリスに赴任したとき、住むところが決まるまでの1ヵ月くらいの間、同時期に赴任した二人の先輩社員とカンパニーハウスで共同生活をすることになりました。初めての駐在員生活に期待と不安を抱え、先輩たちにいろいろ相談しようと思って夕飯を作って待っていたのですが、遊びに行って帰ってこなかったこともありました。「昨日の夜はなぜ帰ってこなかったんですか? せっかく夕飯用意していたのに」ってまるで彼女かのように文句を言ったのですがどこ吹く風。今でもそのうちの一人の方に「あのときは、、」と言ってみるのですが、いつも「そんなことあったかなぁ」って煙に巻かれてしまいます。 会長の本田さんです。

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