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アントレプレナーシップの先駆者たち ~後編 猪上さん~ 成功するまで何度でもチャレンジする

アントレプレナーシップの先駆者として新事業創出プログラムに挑戦中の社員の方にお話をうかがうこの企画、前回の部品技術部第二加工技術課 西海さんに続き、今回はイノベーション技術開発部の猪上さんにインタビューしました。

前回の記事

「武蔵イノベーションプログラム」とは?

ジヤトコの中では「武蔵イノベーションプログラム」と呼んでいますが、正確には「東三河 Innovator’s Bus 2023 Summer」という名称です。武蔵精密工業株式会社が主催し、2ヵ月弱という短期間でイノベーションに関する学術的な方法と実践(フィールドワーク)を学びます。新規事業創出の先進企業である武蔵精密が東三河地区の企業、個人、自治体に向けて作り上げたプログラムで、イノベーターとしてのマインドとスキルセットの獲得が目的です。6月末から8月末まで行われる今回のシーズンにジヤトコも参加させていただきました。

「成功するまでやれば失敗はない」 イノベーション技術開発部 猪上さん

「髪の色を白くしたかったんですけどなかなか思うようにいかなくて」と話す猪上さん。「やりたいと思ったときがやり時だ!と思ってます」と笑います。これまでイノベーション技術開発部でさまざまな挑戦をしてきた猪上さんにも、武蔵イノベーションプログラムは多くの刺激や学びを与えてくれるそうです。

振り出しに戻ってしまいました

私たちのチームは「移動が困難な方々の移動をスムーズにする」というテーマで事業プランを検討してます。始まって1ヵ月ほどたちますが、何人かの方にインタビューして、その中のひとりをターゲットに置き、その方がどうなれば幸せになれるか?という観点でソリューションを考えてきました。それを元にアプリを使った事業のプロトタイプを考え、本人にインタビューするところまで行ったのですが、メンターの方に「この程度じゃないよね」「もっとできることがあるんじゃない?」と言われてしまいました。もう一度「ターゲットの方がどうなれば幸せになれるか」という根本を検討するところに立ち返り、今日の夜にみんなで話すことになっています。
最初の座学で「何度も抽象から具体を考える過程を繰り返すことになる」と言われたのですが、まさにその通りでした。小さな行ったり来たりも含めると何度も具体案を作って検討し、また振り出しに戻って考え始めるという経験をしています。

このような状況だったので、7月20日に行われたピッチ(投資家にアイデアを提案し資金を出してくれるかどうか聞く場)のリハーサルでは、私たちのチームは提案にはたどり着けませんでした。いくつかのチームは報告を辞退していましたが、私たちは「とりあえずプロの人に意見をもらわなくては新しい方向に進めない」と考え、ダメなりに自分たちがここまで来たという報告をしました。報告に対しては「困りごとを解決するというところではなく、共存するとかもっと広いところにやりたいことがあるのではないか?もっと目線を広くしてみたらどうか?」というフィードバックをもらいました。さらにひっくり返されたような感じです。

MUSASHi Innovation Lab CLUEでのプレゼンの様子

世の中の見え方が変わってくる

凡人の私たちが思いつくアイデアは、それ自体は大したことがありません。そこから事業を検討していく中で、メンターや講師の方の過去の経験や、投資家の目線でビジネスになるかどうかのアドバイスをもらい、時にはひっくり返されたりしながら良いものに練り上げていくのです。「もっと良いものに、もっともっと良いものに」と考え続けていくことが必要なのです。
これまでの事業プランは、実現の可能性を考えて小さくなってしまっていたようです。メンターの方からも「実現の可能性にこだわっている気がする」と言われました。スタートアップ事業を行うためには、投資家がお金を出したいと思えるような強い情熱や共感が重要で、今までだれもやっていないような大きな課題を扱うほうが良いそうです。「最初の夢はでかく持とう!」と改めて思いなおしました。

今回、プログラムを進める上で自分自身がフィールドワークを行う機会が増え、世の中の見え方がまたひとつ変わりました。チームのテーマに関連すること、例えば、電車やバスの優先席や駅や道のデザインがどうなっているかを自然と観察するようになりました。最近、JRの山手線ホームの車椅子用乗車口の部分は、他の乗車口とくらべてギリギリまで電車側にせり出していることに初めて気がつきました。また、インタビューから知ったこともあります。歩行に不安のある人にとっては、道路の端がとても歩きづらいと言います。道路は雨が排水されやすいように端が丸まっているからだそうです。私は普段歩いていて気がつきませんでした。
このような観察と発見行動は、今後私がさまざまなテーマでイノベーションを考えていく上で継続していくつもりです。それらが蓄積されていくことで、思いもよらない形で別のテーマにもつなげていけるのではないかと期待しています。

チームで動くこと

私たちのチームは3名です。ひとりはジヤトコのバリューエンジニアリング推進室の堀池さん、もうひとりは浜名湖電装の白井さんという方です。堀池さんは、知らない人に話を聞くことにためらいがありません。駅員さんに車椅子の動線を聞いて、実際にその動線を歩き、優先席に座って違う駅に行ってそこの駅を調べてレポートを作ってくれました。白井さんは、このテーマの発案者であり、このテーマで新事業の立ち上げを真剣に考えています。実行力があり、ツールを使ったり、何かを試してみる場合に「こういうのがあるよ」ではなく、「こういうのを作ってきた/やってきた」と結果を持ってきてくれます。

私自身は今回の「移動が困難な方々の移動をスムーズにする」というテーマに対して、今まで自分が関わったり考えたことがなかったため「共感できるか?」「のめりこめるか?」と心配だったのですが、今は共感し、普段から考えるようになっています。「情熱を持ってどうしてもやりたい」「真剣にビジネスとして考えている」人と一緒に仕事をすることで、刺激を受け、共感につながることを知りました。

新事業/イノベーションを考えるときにはひとりで考えるよりも複数人で多くの意見をぶつけ合いながら考えるべきです。そして相手はなるべく自分と考えが近くない人のほうがアイデアが広がります。また、私自身は人と話す中で考えがまとまってくるタイプなんです。「自分が話しながらよく使う言葉は自分にとって大切なんだなぁ」と気がつくという感じです。私たちのチームはみんなそれぞれに考えを持っていて、自分の方向に引っ張り合いながらチームとして修正していく、そんな感じで進めています。

3人で知恵を出し合います

一億円プレーヤーも打率は3割

8月後半にピッチの本番があります。私にとって今回のプログラムのゴールは、このピッチで投資家の方から「お金を出したい」と言ってもらうことです。それに対して100%自信があるか?と聞かれたら今はまだ言えないのですが、自分の成功体験としてぜひそうしたい。まだ全然あきらめていませんよ。あと1ヵ月はありますから。
プレッシャーはないです。いいものができるか?という不安は少しあるけど、これをやらなければ死ぬわけではないですから。自分がこうしたいと思ってやっていることですし、うまくいかなくても次にまたチャレンジすればいいんです。1回で成功する確率はかなり低いことは経験で知っていますが、こういうことを続けていけばいつかは成功できるじゃないですか。成功するまでやれば失敗はしません。年俸1億円の野球選手でも打率は3割ですから、私たちが百発百中で当たるわけはないんです。

成功するまで挑戦すると語る猪上さん

このプログラムが終わったあとも、私はイノベーションを生み出す部署にいるのでいろいろなチャレンジを続けることができます。今は電動化の先のことを少し考え始めています。今回の経験を活かして今後も打てる手は打っていきたい。何度もチャレンジして新しいことを生み出していこうと思います。

これからもチャレンジを続けるという猪上さん。成功は案外近いところに来ているかもしれませんね。9月4日(月)に行われる社内向け「アントレプレナーシップイベント」では今回の武蔵イノベーションプログラム参加者による真剣なピッチ(投資家へのプレゼンテーション)や武蔵イノベーションプログラム事務局の方と武蔵イノベーションプログラムに参加した社員によるパネルディスカッションなどを行います。実際に事業にイノベーションを起こし続けるプロフェッショナルな現場をのぞいてみませんか?

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