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Jatco CVT-XSがIQSで1位に輝いたワケpart1

2023年に北米市場でデビューした日産セントラ搭載のJatco CVT-XS(以下、CVT-XS)が、初期品質の良さをお客さまが評価するランキングである、日本自動車初期品質調査IQS(Initial Quality Study)のドライブトレイン部門で1位に輝きました。
市場デビューした年の初期品質で1位を獲得したジヤトコ初の快挙は、どのようにして生まれたのか、シリーズでお届けします。
第1回はプロジェクト推進室の奥村PCE、ユニットシステム開発部の青田部長、制御システム開発部の鈴木部長に話を聞きました。

(左から)プロジェクト推進室の奥村PCE、ユニットシステム開発部の青田部長、制御システム開発部の鈴木部長、司会のグローバル広報部の山田さん

最初にIQSとは何でしょうか?

奥村:IQSは、J.D.Power社が年に1回、主にアメリカ市場において約3カ月でクルマに乗っていただいたお客さまにサーベイを取って「どんなところが嫌でしたか?」といった質問をして点数付けしたものになります。お客さまの不満のスコアですので、点数が大きくなると悪いということになります。

今回ジヤトコとして初めてIQSで1位を取れた理由は何でしょうか?

奥村:過去のユニットで一番苦労したのは、立ち上げ後すぐに大きな不具合などがあって、品質対策をするのに時間がかかり、スコアが悪化していきました。
CVT-XSは、立ち上げ当初から非常に安定した品質でスタート出来たことが大きな要因だったと思います。1位になってうれしいというよりは、1年目に大きな不具合なく立ち上がることが出来たことに、一番ホッとしました。

奥村PCE

青田:私は6月にアメリカで実際に売っている車を日本に持ってきて運転しました。その時に気持ちの良い走りとパワフルさを強く感じたので、1位と聞いた時は「やっぱりな!」と思いました。その良さがお客さまに受け入れられたと確信しました。

鈴木:我々は制御を開発していますが、今回の強みは完成度の高さにあったと思います。狙ってやったことではありますが、CVT-Xと今回のCVT-XSの定数等の違いはありますが、制御は基本的に一本化しています。
前のCVT-Xが玉成した制御のロジックをそのままCVT-XSは使っています。ですから、制御としてみた場合はVCロット*¹で、すでにその時横に合ったCVT-XのPTロット*²や量産開始レベルまで出来上がっていることが完成度の高さにつながり、その後のIQSや諸々の適合のスムーズ差につながったと思います。結局ソフトとハードの出来上がりが早いと、それを組み合わせてユニットの課題なども、日頃だったらもっとロットが進んでから出ないとできないようなことが、VCロット間もなくのところで出来たりしました。今回車両も新規ではなかったことで、良い意味で車両が固まっていて全体的な完成度が早く出来たポイントの一つだったと思います。

CVT-XSへの想いと、その特徴を教えてください。

奥村:プロジェクトが決まった時から、このCVTが最後だという話だったので、今までの集大成のつもりで臨みました。私が関わったJatco CVT7やJatco CVT8で苦労したところを思い出しながら、またJatco CVT-X(以下、CVT-X)も並行して開発していたので、そちらも参考に今までの叡智を集結するつもりでした。出来としては、80~90点くらいだと思います。

青田:特徴については、まずハードウェアはCVT-Xを基本的に踏襲しています。さらに、CVT-XSでは、小型化・軽量化をさらに加えて性能向上しようと狙ってきました。CVT-Xからの学びが大きく、CVT-Xで出来なかったことをCVT-XSでやるということで、初期のロットから非常に高い性能が出せました。
また、CVT-XSはシステムズエンジニアリング*³をフル適応させた初めてプロジェクトになります。具体的には、車両から部品まで性能・機能の目標値を適切に割り付けて、出来ないところは出来ないトレードオフはどう解くのかというところを、日産自動車とジヤトコが共同で取り組んだという内容になります。ですので、無理な目標の割り付けや、後から達成できなくて手戻ることが今回非常に少なかったです。

CVT-XSのこだわりを教えてください。

青田:私はシステム全体を見ていますが、こだわった部分は特にないです。ただ、ユニット全体としてこだわったのは、とにかく燃費は最初に達成させることです。過去の開発ユニットはどうしても立ち上がり間際まで燃費目標が達成できず、そのために仕様をギリギリまで変えなければいけませんでした。CVT-XSではそれを打破するために取り組んだことで、ユニットの開発期間を通して燃費性能は一度も目標を割りませんでした。

青田部長

他拠点との連携についていかがでしょうか。

青田:茂木が性能を玉成してくれるチームなので、波形や性能の報告を受けるたびに手応えを感じていました。開発初期にコロナが発生してコミュニケーションの取りづらさこそありましたが、ピンチをチャンスに変えたチームだと思います。

鈴木:今回、制御ソフトで見た場合、CVT-XSは途中でジヤトコ エンジニアリングやジヤトコ韓国に移管しています。これはこれまでの開発ではなかったことで、今までであればジヤトコで立ち上げを行ってきましたが、今回はそこをチャレンジしました。
もともとジヤトコ エンジニアリングやジヤトコ韓国は適用(開発)をすごくやられていて、1回出来上がったものを車両に合わせて玉成していく、それを自動車メーカーとネゴシエーションすることに長けています。彼らがいつもできている以上に、1からユニットを設計するGM級のユニットのIQSにつながる部分の緻密な制御の定数の決め方など、難しい中でもやり切ってくれたことが、制御の中ではIQSの結果を出せた大きな要因だと思っています。そういったところで、「ファイナルCVT」という名に違わぬ、全員の知見が出し切れたものになったと思います。

鈴木部長

今後の展望について教えてください。

奥村:CVTはまだまだジヤトコの屋台骨を支えていかなくてはいけません。5年、10年とCVT-XSがクルマに適応されてジヤトコの屋台骨を支えつつ、今後のe-パワートレインの開発・生産につなげられるような橋渡しになってほしいです。

鈴木:実はeパワートレインだけでなく、ジヤトコのモノづくり、風車や電動自転車、eバイクなど色々なものにトライしている部分のすべての根っこは、僕らがCVT/ATで培ったものの延長線上でしかないと思います。そういった意味で、今回ここがしっかりできたからこそ、次のステップにいくアドバンテージとして使っていくことが出来るのではないかと思います。

*¹ Vehicle Confirmation lotの略。
*² Production Trial lotの略。
*³ システムの成功のために複数の専門分野にまたがるアプローチと手段。

次回は実験部編!茂木で試乗してきました!

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